【2月】偶成
(『看図読古詩(修訂版)』, 金盾出版社, 1994年より)
【大意】
若い時代はうつろいやすく、学問というものはなかなか成就しない。それ故、ほんのちょっとした時間すらも、おろそかにしてはならないのだ。池のほとりに春の草が萌え出した楽しい夢からいまださめきらぬうちに、庭先の青桐の葉を落とす秋に驚くのだ。
(石川忠久編『漢詩鑑賞事典』講談社学術文庫,2009年より)
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朱熹(1130~1200)は、字は元晦。また別に仲晦とも字す。号も種々あり、よく知られたものに晦庵、晦翁があります。普通、人を尊称するには字か号で呼びますが、朱熹の場合は“朱子”と呼びならわしています。これは孔丘を孔子と呼ぶのと同じ扱いで、彼が後世どれほど高い尊敬を受けていたかを示しています。
徽州(江西省)の官吏登用試験に及第してから四代の皇帝に仕え、途中迫害も受けたといわれています。朱熹は今日では詩人としてよりもむしろ、哲学者として有名であり、江戸末期までの日本に与えた影響は計り知れません。この詩は「偶々出来上がった作品」とのことですが、他に楽しいことが有り余る青年期の使いよう如何でその人の学問が決まるのだから精励刻苦せよというのが一編の主題です。近時研究により、朱熹の作ではなく、日本人(江戸初期の五山の僧侶)の作という説があるようですが、いずれにしても、学ぶことを怠っては人間、進歩がないことは間違いありません。頑張りましょう!!