【8月】天題
(『看図読古詩(修訂版)』, 金盾出版社, 1994年より)
【大意】
昨夜の星、昨夜の風――その星影のもと、風の舞う中、わたしたちはあでやかな楼閣の西、かぐわしい堂屋の東で、ひそかに会ったのだった。たとえ二人の身は美麗な鳳凰が翼を連ねて飛ぶように結ばれてはいなくても、その気持ちは霊妙な犀の角に通る一筋の白い線のように通じ合っていた。 (川合康三選訳『李商隠詩選』岩波文庫より)
* * * * * * * * * * * *
李商隠(811-858)の愛情を表現した無題詩の前半四句です。夜に出会い、歓楽の時を過ごし、朝になって別れるという過程が回想によって照らし出され、冒頭の「昨夜の星辰、昨夜の風」とうたい起こすのは、二人だけに共有される大切な思いが込められているようです。身は結ばれなくても、心は通じ合っている。かなわぬ恋の切なさを、壮絶な抒情に結晶させています。
「昨夜星辰」といえば、思い出すのが1984年、主人が留学していた当時、北京で流行っていた台湾の連続ドラマ「昨夜星辰」。北京の人々とはちょっと違う、台湾の明るく威勢のよい普通話が耳に大変新鮮で、とても人気のある、懐かしくて思い出深いドラマでした。確かに「かなわぬ恋」がベースにあり、ここにも中国人の漢詩に対する思い入れが感じられます。