【6月】題西林壁
(『看図読古詩(修訂版)』, 金盾出版社, 1994年より)
【大意】
横ざまから眺めれば連なる山々に、すぐそばから見れば独立してそびえる峰にと変わる。
廬山(ろざん)の山々は、遠近も高低もどれ一つとして同じものはない。廬山が様々な姿を見せても、その本当の姿を知ることができないのは、それは、ほかでもなく、私の身が廬山の中にあることによるのである。
(石川忠久編『漢詩鑑賞事典』講談社学術文庫,2009年より)
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蘇軾(1036 -1101 )、字は子瞻(しせん)。眉州眉山(四川省眉山県)の人。元豊七(1084)年、49歳の作といわれます。
前半の二句で視点の変化による山容の変化の描写を、後半の二句では人間の視点によって、物の本質は様々な形態をとって見せ、その全体像は明らかにされ難いこと。つまり、主観という山を抜け出るべきであるというような、哲学的な認識論を述べています。とても示唆に富んだ内容の詩ですね。
まもなく夏休み、廬山の風景は、ちょっと中国的ではない(?)、あたかも西洋の湖畔の別荘地のような感じです。一度是非、訪ねてみては如何でしょうか。