【3月】春夜喜雨
(『看図読古詩(修訂版)』, 金盾出版社, 1994年より)
【大意】
好い雨は、その降るべき時節を知っており、春になると降り出して、万物が萌え始める。
雨は風につれて、密かに夜中まで降り続き、万物を細やかに、音も立てずに潤している。
野の小道も、たれこめる雲と同じように真っ黒であり、川に浮かぶ船の漁火だけが明るく見える。夜明け方に、赤い湿ったところを見たならば、それは錦官城に花がしっとり濡れて咲いている姿なのだ。
(石川忠久編『漢詩鑑賞事典』,講談社学術文庫,2009年より)
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春の訪れには「春一番」と言われるように普通、風を思い起こしますが、実はこの雨が、とても大事な役目を果たしていることは言うまでもありません。この詩の起句のように、まさに「好雨は時節を知り、春に当たって乃ち発生す」ということで、万物を潤し、その芽吹きや開花を促すのです。
これは勿論、自然の姿を映していますが、実際には、物事はすべてこうした時宜を得た春雨のような役割を持つものによって、促され育てられるのではないかと思います。春はあらゆる意味で芽吹きと成長の時期ですね。自然も人間も・・・。