【十二月】白雪歌送武判官帰京(岑参)
(『看図読古詩(修訂版)』, 金盾出版社, 1994年より)
【大意】
北風が砂埃を捲き上げ白草(はくそう)を折りしだいて吹き始めると、ここ胡の地では八月に早くも雪が舞い飛ぶ。まるで一夜のうちに吹いた春風で、木という木に梨の花が咲いたかのようだ。
(松枝茂夫編『中国名詩選(中)』岩波文庫,1984年より)
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岑参(しんじん)(715~770)は江陵(湖北省沙市市)の人。名門に生まれ、進士出身でありながら、辺境での勲功を志して長く辺境に従軍し、安禄山の乱のときに朝廷に戻り、嘉州(今の四川省楽山県一帯)の刺史となりました。
この詩は厳寒の胡地で武姓の同僚の書記官の帰京を見送る送別の詩で、原詩の前四句を取ったものです。作者は厳寒の辺境の地の厳しさを梨の花が咲くうららかな春景色に喩え、目の前に一面真っ白な美しい風景がパーッと浮かぶようです。
今は地球温暖化の影響で、こうした大雪の景色もなかなか都会では見られなくなってしまいましたが、幼い頃の一面の雪景色が思い出されるとともに、別れの寂しさが雪景色によって隠されている感じがします。