【2月】回郷偶書
(『看図読古詩(修訂版)』, 金盾出版社, 1994年より)
【大意】
若いころ故郷の家を離れて、年をとって帰ってきた。お国なまりはいっこう改まらないが、鬢のあたりの毛は白くなったり抜け落ちたりしてしまった。子どもたちが私と顔を合わせても、私のことを子どもたちは知らないし、私も子どもたちのことを知らない。子どもはにこにこしながら、お客様はどちらからいらっしゃいましたかと尋ねた。
(石川忠久編『漢詩鑑賞事典』講談社学術文庫,2009年より)
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賀知章(659~744)は、字は季真、越州永興(浙江省蕭山県)の人。李白を見出した人として知られ、杜甫の「飲中八仙歌」の筆頭にも数えられるほどの酒飲みであったといわれます。
この詩はいつ読んでも子どもと老人のやり取りや取り合わせから、ユーモアと悲哀が感じられる何とも言えない印象深い詩です。平易な言葉でわかり易く、しかしながら人に深い印象を残すという、詩のみならず文章や説明など言葉の使い方の姿勢に於いて、とても示唆に富む詩であり、常にそうありたいと思います。