【11月】山行
(『看図読古詩(修訂版)』, 金盾出版社, 1994年より)
【大意】
遠く、もの寂しい山に登っていくと、石ころの多い小道が斜めに続いている。そして、そのはるか上の白雲が生じるあたりに、人家が見える。車を止めさせて、気のむくままに夕暮れの楓(かえで)の林の景色を愛(め)でながめた。霜のために紅葉した楓の葉は、春二月ごろに咲く花よりも、なおいっそう赤いことであった。
(石川忠久編『漢詩鑑賞事典』講談社学術文庫,2009年より)
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杜牧(803~852)はエリート官僚であり、美男子で遊び好きでもあったといいます。杜牧の詩は軽妙洒脱、センスの良さが持ち味です。この詩は何といっても、秋の紅葉の風景を歌っていながら、その霜に打たれて色づいた楓の葉を、春盛りの二月の花よりも赤いという意外性が最大の魅力です。そしてそれは今や、青春真っ盛りの若者よりも歳を重ねた中高年の魅力を再発見させてくれるという意味でもよく取り上げられています。
高齢化社会の応援歌としても、今に通じる詩ですね。